Happy Angle Paradise!

第10話「一杯のラーメン」

ガラッ

声「たーだいまー!」

引き戸が開き、男性の声が響いた。
見た所、真吾と同じ20代。
ハデなシャツとジーンズを着こなす、見るからにガラの悪そうな青年だ。

龍雄「亮!店の手伝いもせずに、また遊びに出やがったな!」
亮「うるせーな!そんな誰でも作れるようなラーメン作んのなんざ、もう飽き飽きしてんだよ!」

龍雄さんが大きな声で怒鳴ると、亮と呼ばれたその男は叫んだ。

ましろ「・・・・・」

その亮のセリフを聞いた瞬間、ましろの表情が変わった。

ましろ「それでは・・・作ってもらいましょうか・・・その・・・誰でも・・・出来るような・・・ラーメンを・・・」
亮「・・・ま、そこまで言うんなら、つくってやってもいいぜ」

そう言って、亮は準備に取り掛かった。

亮「そらそらーっ!」

どうやら手さばきはよいらしく、あっという間にラーメンは出来上がった。

亮「へいっ!お待ち!」

ましろの前に、亮の1杯が出された。

ましろ「・・・・・」

しかし、ましろは1口も口にしようとしない。

亮「どうした?早く食わねえと麺がのびるだろ」

亮がましろに訪ねた瞬間、ましろが口を開いた。

ましろ「だめです・・・作り直して・・・ください・・・」
亮「なにぃ!?」

亮は顔をしかめた。

亮「てめぇ!食いもしねえでダメだなんて、わかんのかよ!」
龍雄「わかるんだよ!」

亮の叫びに、龍雄さんが横槍を入れた。

龍雄「見てみな、おめえのラーメンを・・・茹で時間を見てねえから、麺の固さが中途半端・・・麺の湯をちゃんと切ってねえから、折角のスープが薄くなっちまってる・・・そんなラーメン、誰が喜んで食うってんだ」
ましろ「あなたは・・・お父さんの・・・ラーメンを・・・何もわかっていません・・・」

ましろが冷たく一言を突いた。

亮「そんなに言うんだったら、てめえがやってみろよ、あぁ!」
ましろ「・・・わかりました」
亮「ハァ!?」

亮はおそらくハッタリをかけていたのだろう。
だが、日々ラーメンの研究をしているましろの実力を知らないのが、彼にとっては災いとなった。
そして、丹念に手をかけた、ましろの1杯が出来上がった。

ましろ「どうぞ・・・」
亮「・・・・」

恐る恐る亮は、1口麺をすする。

亮「!!」

亮の身体に衝撃が走った。

亮「・・・・・う、うめえ」

認めたくなかったのだろうが、亮はそう言わざるをえなかったのだ。

亮「く・・・て、てめえ・・・!」

亮はましろを睨み付ける。

ましろ「悔しい・・・ですか?・・・ならば・・・勝負しても・・・よろしいですよ」

ましろは不敵な笑みを浮かべた。

亮「お・・・おぅ、やってやろうじゃねえか!今度は本気を出してやってもいいぜ」
ましろ「ただし・・・お父さんの作った・・・麺やスープを・・・・使わずに・・・です」
亮「な・・・なんだと!?」

ましろのセリフに、亮は顔をしかめた。

ましろ「1ヶ月だけ・・・待ちます・・・その間に・・・お父さんの味を・・・研究し・・・そして・・・ちゃんとした・・・自分の味を・・・作ってください」
亮「・・・・・・」
ましろ「自信が・・・おありのようでしたけど・・・やはり・・・勝てないとわかって・・・逃げますか?」

そのセリフに、亮が再びましろを睨み付けた。

亮「う、うるせえ!誰が逃げるっつったよ!そのケンカ、買ってやるぜ!」
ましろ「・・・・みなさん・・・聞きましたね?」
亮「?」

ましろが視線をオレたちに向けた。

真吾「ああ」
ちえこ「聞いちゃったかも〜」
りな「この耳でしかとね」
かすみ「私も聞きました」
ミーコ「りょーおにーちゃんのラーメン、たのしみだねっ」
ジョニー「さーて、どうするのかな?亮とやら」
セティ「ま、期待しないでおくわ」
フリード「逃げたら承知しねえからな!」

オレたちは龍雄さんにお金を払い、店を後にした。

真吾「ましろ、あれでよかったんか?」

オレの問いにましろはクスリと笑う。

ましろ「ええ・・・彼は・・・必ずやります・・・」


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