夢追い虫カルテットシリーズ

VOL.2「アニゴンの来襲」

ある土曜日、光彦は一人で家の中でボーっとしていた。

(ひまだよなぁー)

などと思っていたとき、不意に玄関でチャイムが鳴った。
光彦「はいはいどなたですか?」
出てみると、そこには、兄の教一の姿があった。

光彦「兄さん…なんでここに来たの?」
教一「いやちょっと泊めてもらおうと思ってな。」
光彦「奥さんは?まさか逃げられたとか…。」
教一「いや、同窓会とか言って田舎に帰っているんだ。だから泊めてくれないか?」
光彦「別にかまわないけど。」

そういったやり取りの後、教一は家に上がりこみ、光彦と話を始めた。
話は、やや説教めいたものとなった。

教一「お前もそろそろ職見つけろよ。そりゃあ、お前は勤労意欲はあるから典明よりはましだと思うけど…でもフリーターじゃ俺も父さんも母さんも心配なんだよ。」
光彦「……………」
教一「それに、お前恋愛に関しては奥手だからなー。今も女っ気なさそうだし…結婚しろとは言わないが、早く彼女の一人くらい作らないと。」

光彦は「また始まった…。」などと思いつつ、兄の話を聞いていた。

その時、玄関のドアが開いた。
買い物に出ていたまゆり、あすか、みゆう、ひとみの4人が帰ってきたのだ。

みゆう「ただいまー。」
まゆり「ただいま帰りました。」

(ヤバイ、こいつらのことすっかり忘れてた!)

光彦はあせった。案の定、教一は

教一「誰、この子達?」

と聞いてきた。その質問にみゆうが反応した。
 
みゆう「あたしたちはご…」
光彦「わーっ!」

「ご主人様をお守りする守護天使です!」と言いそうになったのを察知した光彦は、とりあえず4人を連れて外へ出た。

ひとみ「あの人は一体誰なのですか?」
光彦「僕の兄貴だよ。」
みゆう「なんでさっき大声出したの?」
光彦「君たちの正体知られるとまずいと思ったんだ。」
あすか「…どうしてですか?」
光彦「守護天使のこととかが世間に知れたら大騒ぎになるし…第一、兄貴は虫が嫌いなんだよ。だから、君たちは、近所の家の子、ということにしておきたいんだ。協力頼むよ。」
まゆり「分かりました。皆さんもよろしいですわね?」
みゆう「はーい!」
ひとみ「分かりました。」
あすか「…もちろんです。」

教一「近所の子?」

訝しげに教一はたずねた。まあ無理はない。
光彦「うん、この子達両親があまり家に帰って来ないからこの家によく来るんだ。じゃあ各自自己紹介して。」
まゆり「まゆりです。よろしくお願いしますね。」
あすか「…あすか…です。」
みゆう「みゆうです、よろしく!」
ひとみ「ひとみです。よろしくお願いします。」
教一「ふーん…私はこの光彦の兄の日高教一です。弟がいつもお世話になっているようで。」

こうして、一通りの紹介が終わり、家の中が落ちつくころにはもう夕ご飯の時間であった。

光彦「ご飯はこの子達が作ってくれるから待ってて。」
教一「へえー、結構上手くやっているじゃん。」

この日のメニューは、ハンバーグとボウルいっぱいの野菜サラダであった。
野菜サラダといえば、まゆりの大好物で、しばしば食欲のリミッターが外れる料理である。この日も例外ではなかった。

教一「このまゆりって子、野菜よく食べるねえー。まるで芋虫みたい。」
光彦&まゆり「ぎくっ!」
教一「あ、気悪くした?だったらごめん。でもここに芋虫がいたらいやだよなあー。」
…少し場が気まずくなった。

食事後、卓上の片づけをしようとする教一に、ひとみが声をかけた。

ひとみ「あ、そういうことはあたしがやりますから。お兄さんは休んでいてください。」
教一「ありがとう。」
(このひとみって子、結構いい子だな。)

と教一は思った。
その数分後、再びひとみが教一に声をかけた。

ひとみ「何か用事などありませんか?」
教一「いや、ないよ。」
ひとみ「そうですか。また何かありましたら言ってください。」
教一「ありがとう。」

さらに数分後、
ひとみ「何か用事などありませんか?」
教一「ないよ。」
ひとみ「そうですか。」

さらにさらに数分後、

ひとみ「何か…」
教一「あの、ちょっと君しつこい。もうそういうこと聞かなくてもいいよ。」
ひとみ「…そうですか。」

ひとみはしょんぼりと去って行った。
教一は、

(前言撤回、あの子しつこい。)

と思うようになってしまった。

さらに、教一は、風呂から上がったときに、部屋の隅でうずくまるあすかを見た。

教一「何やってるの?」
あすか「…部屋の隅にいると…何だか落ちつくんです…。」
教一「そう…(変な子…)。」

さらにしばらくして、テレビの前でくつろぐ教一に、みゆうが、

みゆう「スキあり!」

と、いつもの悪い癖を発揮して、首筋にキスをしてしまった。
これにはさすがの教一も驚いた。

教一「わあっ!」
光彦「どうしたの兄さん!」
教一「今このみゆうって子が首筋に…。」
光彦「あ、気にしないで。これこの子の癖だから。みゆう、何度も言っているだろ、そういうことしちゃダメって。」

光彦はみゆうを伴って去って行った。
一人残された教一はひたすら困惑していた。

(なんなんだあの子達は!)


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