夢追い虫カルテットシリーズ

VOL.1「ひとみと迷いネコのバラード」

ある秋の夕暮れ。まゆり、あすか、みゆう、ひとみの4人は仕事を終えて、雑談で盛り上がっていた。
やはり年頃の女の子4人ということで、自然と話は色恋沙汰に向かっていた。

みゆう「ねえねえ、みんなは死ぬ前はどんな男の子がタイプだった?
    あたしは頼りになりそうな子がいいなー。」
あすか「わたしは…足の速い子が…。」
まゆり「わたくしは白くてきれいな方がいいですわね。
    それからきれいな糸を吐く子供が欲しかったわ。」
あすか「わたしはやっぱり…内臓が丈夫な子供をつくりたかった…。」
みゆう「あたしは高く飛べる子がいい!あ、そうだ、ひとみちゃんはどう?」
ひとみ「……………」

ひとみは黙っていた。そしてゆっくり立ちあがると、無言のまま外へ出ていってしまった。

みゆう「あ、ひとみちゃん!…いったいどうしたんだろ?」
あすか「…さあ。」

残された3人はただ顔を見合わせるのみであった。

一方、外に出たひとみは、夕映えに長い影を引きずって、とぼとぼと街をさまよっていた。

(ああ、恋…子供…あたしには縁の無い話だったな…。子供を産めるのは女王様だけだったし…おまけにあたしは体が大きくて来る日も来る日も外回り、結局妹の世話も出来なかった…。ああ、一度でいいから『ママ』になってみたい…。)

とそんなことを考えながら歩いていると、不意に何かが足にぶつかった。

ひとみ「え、な、何?」

見ると、それは、黒くて小さい、かわいい子猫だった。

(か、かわいい…。でもこの子どうしよう…そうだ、あたしがこの子の『ママ』になってあげよう!)

そう思ったひとみは子猫を拾い上げると、一目散に光彦のアパートへと駆けていった。

ひとみ「ただいま!あの、ご主人様、あたし猫を拾ったのですが、飼ってもいいですか?
    もちろん世話はあたしがやりますから。」
みゆう「あ、かわいいー!あたしもこの猫飼うの賛成!」
まゆり「わたくしからもお願いいたします。」
あすか「…おいて…あげて下さい…。」
光彦「うーん、よし、わかった。飼っていいよ。その代わり、きちんと世話すること、いいね。」
ひとみ「ありがとうございます!」

こうして、黒猫は日高家に引き取られることとなり、「ひろみ(命名:ひとみ)」と名付けられた。
特に、一番ひろみのことを大事にし、かわいがったのはひとみであった。

ひとみ「はい、ひろみ、ごはんだよ。おいしい?…そう、よかったー。あたしのことは『ママ』と思ってね。あたし、ひろみのことずっと守ってあげるから、安心してね。」

こうして、ひとみとひろみの幸せな日々は続いていたが、しばらくするとだんだんひろみの元気が無くなっていった。

(どうしたんだろう?)

ひとみの心配は募るが、原因は分からなかった。


Otogi Story Index - シリーズ小説 - 夢追い虫カルテットシリーズ