夢追い虫カルテットシリーズ

VOL.16「天使のスプリングピクニック」

なんと、暴走ボートが、前を見ていなかったのか、避けきれなかったのか、ひとみとまゆりの乗ったボートに当て逃げをしたのだ!

少年「バカヤロー!気をつけろ!」

ぶつけられたショックで、ボートは大きくバランスを崩した。そのため、オールを持っていてバランスの変化にうまく対応できなかったひとみが池に落下してしまった。

ひとみ「きゃっ!」
まゆり「あっ、大変!」

春とはいえ、池の水はまだ冷たい。元アリで寒さに弱いひとみはたちまち溺れ、動けなくなり、沈んでしまった。

光彦「よし、僕が助ける!」

そう叫ぶと、光彦はパンツ一丁になり、池に飛び込んだ。そして、ひとみを池から救い出した。

光彦「みんな、岸に戻るぞ!」

光彦は先ほどまで自分が乗っていた空ボートを引っ張り、まゆりは気を失ったひとみを乗せたボートを漕ぎ、みゆうは疲れを忘れた様子でボートを漕いでそれぞれ岸にたどりついた。
岸にたどりついた光彦がまずした事は、ひとみに水を吐かせ、意識を取り戻させる事であった。
幸い、飲んだ水の量は少なく、ひとみはすぐに意識は取り戻した。
だが、まだ予断を許さない状況は続く。ひとみはあまりの寒さにひたすら震え続けていて、今にも死んでしまいそうにさえ見えた。

ひとみ「…ご主人様…寒い…助けて…。」

今にも消え入りそうなか細い、しかし悲痛な声を聞いた光彦は、ある決心をした。
そこで、まず残りの三人に指示を出した。

光彦「みんなはひとみの着替えの服と下着と、カイロを買ってきてくれ!僕はあそこの交番に力を貸してもらいに行く!」
まゆり&あすか&みゆう「はい!」

三人は一目散に駆け出していった。
残された光彦は、パンツ一丁なのもかえりみず、ひとみと自分の服を抱えて公園の入り口前の交番に向かった。

警官「な、何だね君達は?」
光彦「急を要するんです!タオルと布団を貸して下さい!」
警官「一体どうしたのかね?」
光彦「この子が池に落ちちゃって…暖めなくてはいけないんです。」
警官「分かった。奥の休憩室を貸そう。それからタオルも用意するよ。」
光彦「あ、ありがとうございます!」

警察の協力をとりつける事ができた光彦は、すぐさま布団の敷かれた休憩室に入った。

光彦「あ、中には入らないで下さいね。」
警官「…分かった。」


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