Legend of Quel

第一部(P.E.T.S.12人編) 第9話

ブロロロロロ......
キキッ(ブレーキ音)!
そこへRynexがGストライカーで駆けつけてきた。

Rynex「G3様!!!ご無事でしたか!」
G3‐XX「Rynex...何故ここへ?」
Rynex「G3様がピンチだと思ったのですが...どうやらいらぬ心配でしたね。
    それと、ワーバインについての調査結果をお知らせしようと思いまして。」

その時、ワーバインが突然、ガックリした様子で愚痴を言い始めた。

ワーバイン「...畜生......何でだよ...」
G3‐XX「!?」
ワーバイン「何でお前みたいなヘタレ野郎が主人公で...俺がやられ役なんだよ!」
G3‐XX「はぁ!?ヘ、ヘタレって...おい...(汗)」
ワーバイン「昔から...俺がシュモクザメだった時からそうだった...
       前世で女っ気のない人生を送ってきた俺だったが、それでも一度だけ、
       好きだったメスのシュモクザメといい雰囲気になった事があったんだ...」
G3‐XX「な、何ぃ...?????」

突然の脈絡の無い話にわけがわからないG3。

ワーバイン「やっと求愛にまでこぎつけようというその時!!!海に人間どもがやって
        きて、俺を......!」
らん「......」

らんにはもう、かける言葉さえ思いつかなかった。ワーバインの悲しい過去にただ涙するしかなかった。

Rynex「そう、あなたはその時、人間達に銛で串刺しにされた。そして恨みの念を
     持ったまま冥府の世界へ行き、復讐鬼となって現世にやったきた。」
ワーバイン「そうだ!あの時人間の邪魔が入らなければ、俺は彼女とうまくいってたん
        だ!!! だから人間どもと、それに加担する守護天使が憎かった。特に
        そこにいる金魚のらん! 同じ魚類として、守護天使となったお前が一番
        憎かった...いいや、憎いと思い込んでいた......」

恨みに満ちた口調が少し和らいだ。

G3‐XX「思い込んで...?」

ワーバイン「でも俺は、今やっと気づいた。金魚のらんを殺そうとしたのは、憎かった
        からじゃない。本当は好きだったから、手放したくないと思って、永久に
        俺だけのものにしたかったからだ。
        冥府の世界へ行ったのも、強くなって、女にもてたかったからなんだ。
        そう、この青い鎧の腐れ厨房みたくな!」
G3‐XX「誰が腐れ厨房じゃ、ゴルァ!!!(怒)」
Rynex「まあまあ抑えて。それにしても、何か考えが無茶苦茶ですね...(汗)
    それに、G3様は女性と付き合った事はもちろん、いい雰囲気になった事もない
     ですよ。」

どうやら、ワーバインから見て、守護天使たちの近くをうろつくだけのG3が女性にモテモテに見えるらしい。

ワーバイン「くそっ!大体、こんなオタクストーカー野郎の周りに女っ気がある事自体
       間違ってんだよ!馬鹿野郎...畜生...!引きこもりのドキュンヒッキー
       のくせによお...!!! お前なんか...お前なんか死んじまえ!!!!!」
G3‐XX「な...何だと...この野郎...(怒)」
Rynex「何か、この世に対する恨みを全部G3様にぶつけてるみたいですね..(汗)」
ワーバイン「畜生!彼女が欲しいよう...ガールフレンドが欲しいよう...
        モテモテの主人公になりたいよう...ウウウウ......」

まるで酔っ払いのおやじみたいに泣き崩れるワーバイン。そこへ歩み寄るらん。

らん「ワーバインさん、あなたもまた被害者だったのですね。とても辛かったのでしょ
   う。人間を憎みたくなるのも無理はありませんね。でも、憎しみからは何も生ま
   れませんよ。憎しみのままに暴れても、また新たな憎しみを生むだけです。
   それに、本当に好きな人がいるなら、相手の事を一方的に自分のものにしようと
   いうのはやはり違うと思います。」
ワーバイン「らん...」
らん「その人のことが本当に好きなら、その人を思いやり、その人のために何かをして
    あげたい、その人に幸せになって欲しいって思うのが本当に『好き』という事だと
    思います。」

らんは、自分のご主人様への想いを重ね合わせて語った。

Rynex「たとえ相手が自分の事を何とも思ってなくても、相手が自分の存在すら知らな
     くても、その人を守るために自分を投げ出せる人って、とてもかっこいいと思い
     ますよ。そうですよね、G3様?」
G3‐XX「な、な、な、なぜ俺に振る...?(滝汗)」

慌てふためくG3。

らん「ワーバインさん、あなたの気持ちは嬉しいけど、らんはそれに応えてあげる事は
   できそうにありません。ですが、きっといつか、あなたにもいい人が見つかります
   よ。大丈夫、あなたにはあなただけの価値があるはずです。もっと自信を持って
   自分を磨けば、きっと認めてもらえますよ。」
ワーバイン「らん......ありがとう...お前は本当に優しい奴なんだな。
       俺はお前を殺そうとしたのに。ああ、俺は何て事を...こんな...こんな
       いい奴を手にかけようとしてたなんて...すまなかった...本当にすまな
       かった...」

悔恨の涙を流して号泣するワーバインは、怪人体から人間体(24、5歳くらいの男性)に戻った。
らんの言葉の一つ一つが、ワーバインの心に優しくあたたかい光を照らしたようである。

ワーバイン「俺、しつじの世界に行くよ!そこで自分を磨いて立派な守護天使になっ
        て、胸を張って誰かを好きだって言える男になるよ!そしたら、きっとまた
        らんに会いに来る!約束だ!」

らんはその言葉を聞き、満面の笑みを浮かべて答えた。

らん「......はい!!!」

その時、光とともにメガミ様がワーバインを迎えに来た。

らん・Rynex「メガミ様!?」
G3‐XX「おお、ナイスタイミングだな。」
メガミ様「これまでの事、全て見せてもらいましたよ。ワーバインよ、よくぞ悔い改めて
      くれました。あなたならきっと、立派な守護天使になれますよ。さあ、こちら
      へ...」
ワーバイン「らん。お前に会えて、本当によかった。ありがとう。それから、そこの青い
        奴!お前にも感謝しなくちゃな。」
G3‐XX「へ!?」
ワーバイン「お前のお陰で、俺は大切なものをなくさずに済んだ。それに、俺の散々な
        愚痴を聞いてくれたし。」
G3‐XX「はは...たしかに散々だな(^^;」
ワーバイン「恩人よ、お前の名を聞かせて欲しい。」
G3‐XX「クックックッ、俺か?聞いて驚け!俺の名はG3!!!  ネット上の鬼畜、
      仮面ライダーG3‐XX(ジースリー・ダブルエックス)じゃい!!!!!」
ワーバイン「G3か...お前の名は忘れない...らんとともに俺の心に深く刻み込
        んでおくぞ。それじゃあな!らん!G3!いつかまた会おう!!!」
らん「ワーバインさん!お元気で!!!」
Rynex「私も応援してますよ!!!」
G3‐XX「ま、せいぜい頑張れや。」

そして、ワーバインはメガミ様に導かれ、しつじの世界へと旅立っていった。

 

G3‐XX「ふう、やれやれ。全く人騒がせな奴だったぜ。それにしても、結局のところ、
     今回の俺って、一体何だったわけ?ああ...俺の立場よ、どこへ行った...」
らん「命の恩人ですよ。」
G3‐XX「はぁ!?」
らん「G3さん、あなたはらんを助けてくれましたから。それも2回。
   あの火事の時も、あなたが助けて下さったのですよね。ありがとうございます。」
G3‐XX「ちょ、ちょ、ちょっと待てやコラ!な、何を証拠に...!?(汗)」

いきなり核心を突かれて狼狽するG3。

らん「つばさちゃんとくるみちゃんが、あの現場で青い鎧の人を見たって言うんです。
   燃えさかる店の中に突入していったとか。他にも大勢の人が見たって言ってますし
   ね。」

そう言うらんの表情はにこやかだった。

G3‐XX「フン、んなもん目の錯覚だ!」
Rynex「G3様って、ほんと照れ屋さんですね♪あ、申し遅れました。私、G3様に
     お仕えする使い魔のRynex(ライネックス)と申します。以後お見知りおきを。」
らん「どうもはじめまして。こちらも改めて自己紹介します。守護天使、金魚のらん
   です。こちらこそよろしく。ところでRynexさん、あなたは守護天使ではないのです
   か?」
Rynex「ええ、違います。私は夢魔の末裔なんですよ。ですから、男でも女でもない
     状態で、性別はこれから決まります。」
らん「はあ......」

挨拶を交わす2人を尻目にグランチェイサーにまたがるG3。

G3‐XX「やれやれ、姿は見せないつもりだったんだがな。まあいいや、とっととずらか
      るとしようかね。」

帰ろうとするG3の方へ歩み寄るらん。

らん「あの...」
G3‐XX「るるに夜露死苦な。」

ブロロロロロロ......(グランチェイサーで走り去る)

Rynex「それでは私も、これで失礼させていただきます。時々お邪魔してもよろしいでし
     ょうか?」
らん「ええ、いつでもお越しください。歓迎しますよ。」
Rynex「ありがとうございます。それでは~♪」

ブロロロロロロ......(Gストライカーで走り去る)

2人が去った後、家からご主人様とるるが出てきた。

ご主人様「らん、大丈夫か!何か物音がして、銃声が聞こえたってるるから聞いた
       んだが...」
るる「らん姉たん!るる、おトイレから戻った後、らん姉たんが心配で、ご主人たまを
   呼んできたんらぉ!!!」
らん「ええ、何とか大丈夫ですよ。」
ご主人様「どうして1人になったりしたんだ!!!今回も、あの火事の時も...」
らん「...ごめんなさい、つばさちゃんやくるみちゃん、それにご主人様に迷惑をかけ
   てはいけないと...」

らんの言葉を遮るように、ご主人様がらんを抱きしめる。

らん「!!!...ご主人...様...?」
ご主人様「らん、よかった...本当に無事でよかった...」
らん(ああ...らんは今、とても幸せです...)

常日頃からご主人様を想っているらんにとって、それは至福の瞬間であった。

るる「あ~っ、ずるいぉ~ッ!るるも、らん姉たんが無事でよかったぉ!ご主人たまに
   抱っこしてほちいぉ!」

そこへるるが割り込んでくる。数秒後、心配になって起き出して来た他の守護天使たちも出てきて、

みか「あ~~~ッ、何やってんのよ!人が心配して来てみれば...ずるいわよ、
    みかも入れなさい!」
なな「ななも、ななも~~~ッ!」

みんなが一斉に駆け寄り、ご主人様はもみくちゃにされた。

ご主人様「ハハハ...こりゃ今夜は眠れそうにないな...」
らん「ふふふ...」

素晴らしいご主人様や仲間達に恵まれた幸せを改めて噛みしめるらんであった。

らん「G3さん...感謝してますよ...」


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