P.E.T.S[AS]

第2話「遊園地へ行こう!」

焼けるような夕暮れの空に、私は浮かんでいた。
この空には見覚えがある。今住んでいるところとは・・・違う。
ここは私の生まれ故郷の町だった。故郷の町の空に、私は浮かんでいるのだ。
下の方に、私の昔のおうちが見える。
懐かしい。よく遊んだ庭もあった。
その庭に大きな犬、そして猫と遊んでいる、ちいさな女の子が見える。きっと私なのだろう……。
…………
その女の子は怒っていた。
 
「もう!どうしていつもけんかばっかりするの?」

……

「ロック、もうティコをいじめちゃだめだからね」

……
ああ……
そうだ、これは18年前……
二人が、まだ動物だった頃だ。そして、私が本当に小さな子供だった頃。
ティコ……よくいじめられてたっけ。
かわいそう……ロック、いじめちゃだめだよ。
けれどもその思い出の世界の中で、ロックと呼ばれた大きな犬は、彼に比べるとずっと小さなシャム猫のティコに向かって、全く威嚇を止めようとしない。

「もう!そんなんだとねぇ。ロックのこと嫌いになっちゃうんだから!」

ティコが勝ち誇ったように私の小さな肩に飛び乗った。
ご主人様を盾にされ、手が出せなくなったロックは頭を垂れて、うなだれてしまう。

…………
思い出の再現は完璧のようだった。懐かしみながら、私は思い出の世界の中で、思い出を思い出す。
ティコとロックは会うたびにけんかして、幼い私を困らせた。
でも、こうしてふたりと一緒にいる時間が、その頃の私にとって最大の幸せのひとつだったのだ。

…………
視界がぼやける。
もうすぐ、この世界から抜ける。
なぜか、そう分かる気がした。


「……人様……」

私を呼ぶ声……これはどの世界からだろう?
……

「ご主人様!」


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