きよく!ただしく!!

元六・ヱ戸時代編 第参話「闇夜の九官鳥」

ちょうどその頃、恵の親分は寿曽屋の周りを言ったり来たりしておりました。

恵「変ねぇ・・・今夜こそあいつらが来ると思ったのに。
  あたしの勘もまだまだなのかなぁ・・・そろそろ帰ろっかなぁ。」

今夜の捜索を諦め家路につこうとしたちょうどその時、

恵「あれ、何かしら?」

寿曽屋の庭の方から何やら紙切れのようなものが飛んでまいりました。
拾い上げそれを開くと・・・・

「助けて、殺される。」

と、女の文字で書かれております。

恵「ちょっと、何なのよこれは・・・・」

恵は自分の指を舐め、かざしてみました。

恵「この風向きからすると・・・やっぱ寿曽屋さんの中から飛んできたのね。」

恵は十手を構え、裏の勝手口から寿曽屋の中に侵入したのでした。

 

よしき「おや?これは・・・・」

よしきがまじまじと見ていた寿曽屋の家の図に新たに赤い点が灯りました。

よしき「勝手口から入って庭を通り・・・
    このままだと町娘達が捕らえられているらしい牢に向かうようですね。」

インカムのスイッチを入れるよしき。

よしき「お頭、千兵衛さん、聞こえますか?
    誰かが寿曽屋に侵入して牢に向かっているようなんですね。」
きよ『誰かって、誰や?』
よしき「わからないんですね。同業者かもしれませんですね。」
千兵衛『でも勝手口あたりには恵ちゃんがいたはずだ。
     彼女に見つからずに侵入なんて出来ないだろうと思って
     僕らも屋根から侵入することにしたんだし・・・・』
きよ『てことは、その当人・・・ってとこちゃうか?』
千兵衛『!?』

恵「何なんだろう?廻船問屋にこんなところがあるなんて聞いたことないわ。」

抜き足差し足で通路の奥へと進む恵。

恵「ハッ?!」

一番奥にきたところで恵は立ち止まりました。
なんとそこには月明かりに照らされてた牢があり、
その中には十数人の年端もいかない少女達が座っていたのです。
恵の気配を察した一人の少女が恵のほうを向いた。

少女「あ・・・・あなたは・・・・」
恵「あ、心配はいらないよ。あたしはこういうもんだから。」

恵は十手を彼女に見せた。
それをみたとたん彼女の目が輝き、前に進み出てきたのです。

少女「お願いします。私達を・・・助けてください!!」
恵「ち、ちょっと落ち着いてよ。あなた達どうしてこんなとこにいるの?」
少女「私は、隣の町で織物屋に奉公していましたみよと申します。
   ある日、ご主人様のいいつけでこの寿曽屋におつかいに来たところ
   ここの主と番頭に手篭めにされ・・・
   ここに閉じ込められてしまったのです・・・・・」

涙を流して訴えるおみよ。

恵「なんてひどいことを・・・・それじゃここにいるみんな
  暴力されてここに閉じ込められてるのね。」
みよ「それだけじゃないんです。
   このままだと私達、南蛮に売り飛ばされてしまうんです。
   お願いします・・・ここから出してください。」
恵「わかったわ、おみよちゃん。待ってて、すぐに牢の鍵持ってくるからね。」

今来た道を引き返し、
恵は明かりのついていない部屋から捜索を始めました。
そして三つ目に入った部屋で机の上にあった鍵束を見つけました。

恵「きっとこの中に牢の鍵があるはず・・・よし!!」

鍵束を取り、部屋を出ようとしたその時!!


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