2人のモモ

第7話「再会・お兄ちゃん 後編」

「い、今のは…」

 テレパシーを受け取ったお兄ちゃんから出た言葉がこれだった。
 な、なんか疲れた…。

『ど、どうでしたか? ご主人様』

 ラナの顔を見ると、なんだか青ざめていた。
 もしかして、ラナの限界を越える範囲まで使わせてしまったのかな?

『だ、大丈夫です』
『ラナの大丈夫は、当てにならないの! もう…』

 混乱しているお兄ちゃんのよそに、私はラナを抱き寄せて休ませる。
 この子はいつも無理するから、こっちが気づいてあげないとどうしようもないほどになっちゃう。
 それは、白鳥のころも同じ。
 早く元気な姿を見せたいから、気づいている羽を広げて飛ぼうとしていた。
 私たちが止めるまで、元気な姿を保とうとしていた。
 少しでも心配させたくないからってラナが言っていたけど、そんなことされたら、かえって心配する。
 保護者兼ご主人様として、こういうのは早期に止めてあげないと、また辛い別れを繰り返す事になるから。

「なんか、誰かの記憶が僕の中に入ってきたような…」
「…私の記憶だよ。昔、あなたと過ごした、記憶」

 ラナを通して見せた私の記憶を、お兄ちゃんに説明する。
 思い出してほしい、あの日ことを。
 私が良い意味で変わるきっかけになった、あの会話を。

「じゃあ、君は本当に、平野桃華ちゃんなの?」
「うん。モモちゃんのオリジナルであり、かつてお兄ちゃんと一緒にモモちゃんの世話をした、かつて、小学3年生だった、平野桃華だよ」

 やっと思い出してくれたお兄ちゃんに、ため息と安堵が漏れる。
 当時からかなり鈍感だったけど、それは今もかわっていないみたい。

「桃華ちゃんは、モモのことを知っているのかい?」
「うん。昨日会ったから。それに、私のところにもいるからね、守護天使が」

 力を使い果たして眠っているラナの頬に、人差し指でぐりぐりする。

「ラナって言ってね、モモちゃんと同期の守護天使なの」
「モモと一緒か。なんか、繋がっている感じだよね」
「私もそう思ったよ」

 私とモモちゃん、そしてお兄ちゃんを繋げてくれたラナ。
 偶然かも知れないけど、これって、なんか必然なような気がする。

「この子は、さしずめ私たちの縁結びの役割をしていたんだね」

 改めて、私はラナの頭を撫でる。

「ありがとうね。ラナ…」
「むにゃむにゃ…。ご主人さまぁ〜」

 なんかの夢を見ているラナが、寝ぼけて私の胸へと顔を埋める。
 あはは、なんかお母さんになった気分。
 でも、しばらく動けないかも。

「お兄ちゃんは、これからどうするの?」

 とりあえず、お兄ちゃんのこれからの予定を聞く。
 せっかくここまで来たんだから、捕まえておかないと。

「僕はもう少ししてから、みんなの待っている家に帰るつもりだけど」
「だったら、私も一緒に行っていい?」
「うん。ぜひ来てよ。子犬を見つけてくれたお礼もしたいから」
「ありがとう、お兄ちゃん」
「じゃあ」

 ラナの頭を軽く撫でてから、お兄ちゃんは奥へと消えて行った。


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