2人のモモ

第6話「再会・お兄ちゃん 前編」

「ここだよ」

 数分後。
 女の子の誘導で、私は動物病院の前についた。

『もみじ山動物病院』

 そこは、モモちゃんに聞いた、お兄ちゃんが働いていた病院だった。
 結構近かったんだ。

「アタシ、ここのお医者さんの知り合いだから、顔パスで通れるよ」
「じゃあ、早く行こう」

 私たちは病院の中へと入り、子犬の様態を説明すると、すぐに診療室に通してくれた。

「ご主人…じゃなくて、キャプテン!」
「ツバサ!? どうしたんだ、一体」

 そこには、女の子の知り合い風の男性が立っていた。
 少し変わっていたけど、お兄ちゃんだった。
 私の記憶の、お兄ちゃんだった。

「この人が、衰弱した子犬を見つけたんだけど、病院の場所がわからなかったから、アタシが案内してあげたの」
「正確には、私じゃなくて、連れの子だったんですけどね」

 私は抱きかかえていた子犬を、静かに診療台に乗せた。
 再会を喜びたいけど、今はそれどころじゃない。
 1つの命の灯火を繋げるために、私はぐっと我慢する。

「助けて、くださいますか?」
「もちろんです。早速、手術に移ります」
「じゃあ、あとはよろしくお願いします」

 私はお兄ちゃんに一礼すると、ツバサと呼ばれた女の子と一緒に出た。
 ここから先は、ただ祈るしかない。

「キャプテンは、きっとあの子犬を助けてくれますよ」
「…獣医さんだからね」

 私は近くにあったベンチに座って、子犬の手術が終わるのを待つことにした。
 なんか眠りが浅いこともあって、すぐに夢の中へと落ちていった。

 

<続>


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