The freezing fragment

3話 「真っ赤コオリ

点灯スル

過去に囚われる気などさらさら無い。冥福位は祈らせてくれ。

ダダダダダダダダ・・・っと階段を駆け上がり、————————ミエタ、横たわった馴染みのカラダ、

「まこっちゃん!?いや、死なないよねっ?ね、ね、ねぇっ!?」愕然として問いかけしか出来なくなった者、

「先輩!??・・・・まだ息は有る!!大家さんには気取られんようにしろ・・・」確認し最善を尽くす者、

「でも、このままじゃ・・・」前者はうろたえる、翼の無くなった雀の様に。

「ミカド!止血しとくから、俺の部屋からスーツケース取って来い!」後者は真下へ伝える、まるで備えておいたかの様に・・・。

Nightmareとは、この世の事か・・・俺は思った。蒼天はもう、泣き崩れている・・・俺だって泣きたい!・・・でも、泣いて状況が変わる訳じゃない。

「スーツケース取って来ました・・「入るなよ」はい・・」口を挟んでもアイツらを入れてはいけない。そして、

「さて、そこの陰に隠れてる奴、覚悟できてんのか?」覇気を込めた、殺す気100%で。「バレたか」三叉の槍を持った人影・・・・撫で肩・・・女か?

「ヒトで死なないのを見たのは初めてだよ、直に死ぬだろうケド」「女か、蒼天下がってろ」会話の内容以上に張り詰めた空気。蒼天は堪らず、真琴を抱え扉の前で蹲る。

「キミ、名前は?」「名乗る必要など無い」一瞬で構えを取る、
 
ダンッと地を蹴る、重力からの離脱

死ねよ、外道が!」水月への一撃・・・(殺った)と思ったが、「はーずれー♪」、
 

シュン、空気を無理矢理に裂く音。「うぉあっ!!!」反撃の槍、横薙ぎ一閃に堪らず後方へ回避する俺、チッ、と舌打ちする女。

(コイツ、そーとー強い)俺も舌打ちを打つ。「ヒトが喋ろうとする時に攻撃は反則、どうせ会うから言うけどボクはDespair。まー、Japanese風に言えば『絶望』」

「呼びにくい名だな」(時間を稼がないとな・・・)「それもそうだな、では、槍の名から2文字貰って『蕾夢(ライム)』とでも名乗ろうかな」

「名乗られたら、名乗るが礼儀、俺は大地、藤田 大地だ。」「ほぅ、覚えておこうっと♪」明るい声だな、余裕も無いのに何故か感じた。

おもむろに、蕾夢が口を開いた。「そこの女が助けたければ、ボクに着いてきな」目の前に黒い空間が出現した。

サッ、と身構える音がした。蒼天か?すかさず「キミらは来ないでよ」槍を構えると、急に俺の身体が石みてーに、重く、冷たくなっていく、くそ、動かねぇ・・・・。

固まった。

動けねぇ・・・・・・・足が、腕が、体が・・・・。

俺の視線が捉えたモノ、

それはペキッ、パキッ、と石化していく先輩、蒼天・・・・

「何なんだよ、悲しいまま、オマエラ、石に成るのかよ・・・」動かなくなっていく口を必死に動かして、言葉を放つ。


(ウォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!! !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!)

声に成らない雄叫びを上げて、俺は固まったまま引きずられていった、闇の底へ・・・・・・・・・・・・・・・

見えた、五感が戻り、身体も動く。・・・光景が先程までとまるで違う。

「気が付いたか?」「・・・!、てめぇ!」思わず胸倉を掴む「先輩達をどうした!」「どうもこうも、あの場所で戦ってはマズいのだろう」「・・・・ちっ、無事だろうな」「勿論♪」

スッ、と槍を構える蕾夢に合わせて、俺も構える。

「御前って悪者?」「まー、世間的には。戦好きだからね、ボク」「気にするな、俺もだ」「じゃ、挨拶もそこそこに」

間合いが有ろうと、隙があれば問題は無い。しかしな・・・、世辞抜きにも女に刃をかけるのは気が引けるな・・・

ジリッ、ジリッ、焼け焦げる様な空気。

「女だと侮らないでねー。ボクは夫人じゃなくて、武人だよ」しまった、『女』という概念を見透かされた様な台詞に、

ヒュン、と飛ぶ短刀。「そんなもん当たるかよ!俺を舐めるな!」グルンッ、と走り高跳びの様に跳ぶ。

足を跳ね上げ、飛んできた短刀を踵付近をギリギリ避けるようにして躱す。

「見逃すとでも思う?」槍が振るわれる、空気を無理に裂くように。

「うっとおしいんだよ!」重力を利用して、縦に回転蹴りを放つ。槍は反れ、俺は着地する。しかし、相手とて体勢は同じ。つまりは、再び対峙しているのだ。

「んじゃ、準備体操は終わりー♪」準備、運動、だとっ—————————————————!?

ヒュンッ、と風を裂くオト、瞬間、5メートルはあった間合いが50cmに満たない位に縮まっていた。

蕾夢の両手に有ったのは・・・アサルトライフルと、イングラムM10サブマシンガン・・・・おいおい!

パラララララララララララララ・・・と、イングラムから火が噴かれる!・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・が!間一髪、俺はバックステップを取り回避する。

地面が砕けていく・・・破片が砂煙を撒き散らし、互いを隠す。(くそっ!見えねぇ!)銃口を、打つ直前に下方に向けたのだ。

「うぜぇ!サシで勝負じゃねぇのかよ!!!!」怒りが沸々と込み上げる。

「ごめんなさいっ♪少し呼び出しがあったんだー☆近いうちにまた会えるよっ♪」砂煙の中から声だけして、その声すらも消えていく・・・。

「くそっ!あの女、赦さん!」言葉を発してると、空間に亀裂が入って俺の身体は月明かりに照らされた。

「あ、蒼天達は!」我に返った。ふと標識を見た、見覚えが在る・・・「っておい!学校の近くかよ!」

学校へは電車で移動するのだが、距離にして55km。平坦な道が多くても、道程は遠い・・・。「どうやって帰るかな・・・」

たまたま持ってたMDを再生してTremble dance tuneと言う曲を流す。

Uptempoの曲に乗って駆け抜ける。目的地は・・・駅。放置自転車を1台、拝借しに。

風、掻き分けて。道、踏みしめて。

ただ、ひたすらに。ただ、ひたすらに。

Going my way.

走る、走る、坂を登り、太陽を背に、走る、走る。   駆ける、駆ける、一刻を争い、一歩を踏みしめ、駆ける、駆ける。   求める、求める、安住の日を、知り合いの無事を、求める、求める。

坂の上に靄が掛かって、薄まったオレンジ色が周りを染めていく。

(無事だよな、多分)安否確認、今の俺にとって最重要課題。

『仲間』ガ居ナクナルノハ不都合ダカラ・・・

 


Otogi Story Index - シリーズ小説 - The freezing fragment