イクサバナ、かつての私はそうだった。
そう言えば・・・何年前だっただろうか。
記憶は偽り。幸せなカンジョウもイツワリ。
創られて、換えられて、壊されて、引き裂かれて・・・・・。
何も感じなくなったのって何時だっけ?もう忘れちゃったよ、私。講師窓から差し込む光とかも。
私の中は造られていた、『施設』で。『白い』塀、『白い』部屋、『白い』ベッドに、『白衣』の先生やナースさん。私も『白い』服。
白、白、白、白、白、白、白、白、白、白、白、白、白、白、白、白、白、白、白、白、白、白、白、白、白、白、白、白、白、白、・・・・・・・・・・・・・・・・・
純白、染まってない色、ナニモナイイロ。
「そうだ、染めちゃおう!・・・でも、絵の具なんて無いしなぁ・・・・。あ、ココにあったー、『赤色』が。」
そう言って、幼女が指したモノ、まだ小さい指で・・・・幼い指で・・・、1人のナースの心臓付近。
筆箱の中からカッターナイフを取り出すと、『ナースさん?おべんきょーおしえて?』と、呼んだ。悪戯する気で、ほんの軽い気持ちで。
「はいはーい。どこが分からないの?」近寄ってくるナースさん。(ゴメンね・・・)思わずにやけた。
「おかーさんや、おとーさん、きょーもこないね」確か、そんな感じの事を言ったんだと思う。
忘れるもんか、その時のナースの顔は。せせら笑った顔、憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い・・・・・
「おかーさんはねぇ、遠くへ旅立っちゃったの」「じゃあ、おとーさんは?」「おとーさんは、おかーさんの後を追って行っちゃったの」
嘘だ、・・・・・嘘だ、嘘だ!
そうだ・・・・嘘吐きは『おしおき』しないと・・・
私も嘘付いたら怒られたもん、ナースさんだって『おしおき』しても文句無いよね・・・・
少女の『悪戯』がスイッチを切り替えたみたいに、変わってしまった。
そう、『狂気』に。
「ねぇねぇ、ナースさん?」若干強張った声でこう言った。「なぁに?勉強?」
「このおはなしって、たのしいものがたりなのかなぁ」そう言って出した1冊の本。
「なになに・・・って、これ『花いちもんめ』の歌詞じゃない。楽しいお歌でしょ?」本人は平静を装った。でも、眼差しが幼かった私にまで分かる。
あれはヒトを侮辱する眼だ。
私は全力で本の裏へ隠していたカッターナイフを投げつけた。頬を掠めて、ナースはぞっとする。
「ひっ・・・」後ずさっていく、・・・・・・・・・・・・・・タノシイ。
「わたしにはなにがあったの?ねぇ、なんでおとーさんもおかーさんもわたしをおいてどこかへいっちゃったの?おしえて、ナースさん?」問い詰める、新たなカッターを手に。
「ひっ、あっ、ああっ・・・」言葉として出てこなくなった。
「ねぇ、どうして?」渾身の力で薙ぐ、首筋を、——————————————————————————————————————————狩る。
ドサッ、そんな音がした。切り口から、血が零れた————————————。
まず、腹を切り、ぐにゃぐにゃの内臓を無理に出す。血がべっとりと幼い手に付く。
構わず1番気持ち悪かった小腸を切る。シュ、と切れ目を入れると血液やリンパ液が混ざりきらなかった、ドロっとした液が溢れてきた。切れ目からイソギンチャクの様に見える柔毛の群れ。
キモチワルイ、嘔吐感が体を襲った。
それでも、続いて大腸に取り掛かる、まるで魚を捌くかの様に。
その後は胃。胃液が薄くなっていた膜を破りそうだった。
続いて背骨。髄液を骨を砕いて垂らした、ペロッて舐めたら気持ち悪さが増した。
結局私は・・・・・・・・・・・・逃げた。死体から、現実から・・・・・・・・・・。
でも、捕まってしまった。『黒服』のヒトに。
『キミ、倉城 水面ちゃんだね?』「おじさん、誰?」『君のお父さんの知り合いだよ。お父さんのお墓、行く?』軽い口調だったけど、サングラスの不気味な光が怖かった事をよく覚えてる。
もうどうでも良かった、だから答えた。
「わたしにうそ、つかないんならいいよ?」馬鹿だった。迂闊だった。
私を連れて行った人間は、犯罪組織の人間。つまりは・・・・・・・・・・・・・・・・「おとーさんたちってはんざいしゃなの?」
『そうさ。君も人を殺した、だから「仲間」だ。』「そーだね、仲間、仲間♪」嬉々としてはしゃいだ、過去を封印して。
それから、訓練を積み過ぎ、という位積んだ。毎日の様に銃を持ち、刀を持ち、・・・・・・・・・・・これでもか、と言わんばかりに障害となるモノを振り払ってきた。
そうして、いつしか私は『漆黒の至宝』と相手に恐れられるまでになっていた。
私の『手術』も回数を増し、四肢や腹部は本人の見えるやり方で取り出された。でも怖くなんて無かった。私は、『漆黒の至宝』だったから。
でも、退屈になった。殺しに慣れていた。そんな時だ。事件が起こったのは。
あれは14の時だ。
殺人者だからって、日本国籍な以上、学校には行ってた。私立の名門校だったけど、私は真ん中らへんの成績で、退屈していた。
突然、襲い掛かってきた集団、私は見覚えがあった。「何やってんの?」仲間、だった人間達に尋ねた。
「御前を殺しに来た」そう言った元・仲間達。「下僕が、何を血迷った?」
私はヒトでは無いから・・・・・・・・・