狼のサファリ 出会いと別れの物語

はるこが死んで、半年後のこと。
ご主人様は、サファリパークで道に迷ってしまい、帰れなくなってしまった。
家路に着く道がわからぬまま、夜が更けようとしていた。
その時! ご主人様の目の前に、ハイエナの大群が!
ご主人様は恐怖のあまり、身動きひとつ取れない・・・。
ハイエナの唸り声だけが無気味に響く。そして、一匹のハイエナが飛びかかった、
その時!
 
「ガオーーーッ!!」
・・・? ご主人様は、一瞬、何が起きたのかわからなかった。
しかし、よく見ると、あんなにたくさんいたハイエナがあっという間に倒されている。
そして、目の前には、返り血に染められた一匹の狼がいた。
こ、今度は僕を襲うのか?
ご主人様は、ふたたび恐怖を感じた。
しかし、そこにいた狼は、かみつくどころか、ご主人様の元に近づいて、
ご主人様の頬をペロペロと舐めはじめた。
「あはは・・・くすぐったいよ・・・。そうか・・・
 君は僕を助けたかっただけなんだ。・・・でも、どうして?」
そう聞いた瞬間、その狼はご主人様に向かってテレパシーで話し始めた!
 
「お前は、あの男の息子だろう? 匂いですぐわかったぜ。
 彼には以前、俺が死にかけた時に治療してもらった。だが、お前が
 俺を見つけてくれなかったら、今頃、死んでいただろう・・・。そして、
 さっきのようにお前を助けることもできなかっただろうな・・・」
「そうか! 思い出したよ! あの時の狼さんだね!
 たしか・・・密猟者に撃たれて瀕死の重症だった・・・。
 それで、僕がお父さんの知り合いの病院へ運んで治療して、
 元気になったのはいいんだけど、またすぐどっかへ行っちゃって・・・。
 短い間だったけど、僕たち、打ち解けていたよね?
 なんで? なんで逃げちゃったの? 帰ってこなくなっちゃったの?」
「俺は・・・そういうのは苦手なだけだ・・・。
 だが、恩を感じている俺としては、お前が危ない目に会うのを黙って
 見過ごすわけにはいかない。だから、助けた・・・」
「そうか・・・ありがとう。お礼に、一晩だけ、うちへ泊まっていかない?
 ・・・あっ! そうだ・・・。僕、道に迷って、帰れなくなってたんだ・・・。
 どうしよう・・・」
「ふっ・・・心配いらねえよ。
 俺がうまく匂いをたどって家に着く道を案内してやるぜ!」
 こうして、ご主人様は狼のあとをついていって、家に帰った。
 
 
 
すっかりご主人様になついてしまった狼は、ご主人様から「サファリ」という名前を
付けてもらい、一人前のペットとして毎日を楽しく過ごしていた。
 
「おーい、サファリ! そんなに速く走るなよ~ おいてかないでよーもう!」
いつもより機嫌が良くて、つい、おもいっきり走っていってしまい、
気がついたときには、とんでもなく高い所に来てしまっていた。
「うわーっ! たっけぇーとこに来ちまったなあ・・・。
 あ、いけね。ご主人様をおいてけぼりにしちまった・・・。戻らねえと・・・」
そう思って、ふりかえって歩き始めようとした、次の瞬間!


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