その4:しつじの世界SS4『ひつ爺☆約束の日』

その4:しつじの世界SS4『ひつ爺☆約束の日』

ひつ爺「フンフンフフン♪フフフンフン♪」

鼻歌交じりで鏡に向かっているひつ爺。

ロック「おっ、ジイさん今日はやけに機嫌がいいじゃん。」
ティコ「何かいいことがあるんですか?」
ひつ爺「ん?ん〜ちょっとねぇぇぇ☆☆
     あっとぉぉ、こんな時間ですねぇぇぇ☆
     それじゃいってきまぁ〜すぅぅぅぅ☆☆」
ティコ「お出かけですか?」
ひつ爺「今日は遅くなるかもぉぉ☆ウフフゥ☆じゃぁねぇぇぇ☆☆☆」
ティコ「ハ・・・・ア、いってらっしゃいませ・・・」

スキップで出かけるひつ爺。呆然と見送るロックとティコ。

ティコ「・・・・」
ロック「・・・ハァ」

そこにサファリ・そら・だいが通りかかる。

だい「あ、ティコお兄ちゃんにロックお兄ちゃん。」
ティコ「やぁ。」
ロック「おぅ、サファリィ。今日はオチビちゃん達のお守りかい?」
サファリ「うっせぇよ、ったく。ところでジイさん見なかったか?」
ティコ「ひつ爺様なら先程出かけましたが。」
ロック「やたら嬉しそうにな・・・」
サファリ「ハハァ、またムサ婆に会いに行きやがったんだな。」
ティコ「どおりで・・・嬉しそうだったわけですか・・・」
そら「仲良しだからね、ひつ爺とムサ婆って。」
サファリ「ジイさんは楽しいそうだけどな・・・バアさんは結構いい迷惑かもしんないな。」
ロック「前々から思ってたんだけどさ、
    なんでオレらってあんなジイさんの下で勉強してんだ?
    もっといい管理役ぐらいわんさといるんじゃないのか?」
よしき「そうでもないですね。」

よしきとななしがやってくる。ななしは黙ってよしきの後を歩いている。

ティコ「よしきさん?」
ロック「どういうことだ?」
よしき「僕も詳しいことはよく知らないんですが、
    ひつ爺様は昔かなり腕の立つエリート天使だったらしいんですね。
    その力は有名で、今現在も神様やメガミ様を除いては
    ひつ爺様の右に出るものはいないという噂なんですね。」
サファリ「マジかよ!」
そら「知らなかった・・・・・」
ロック「信じられねぇな・・あのジイさんがそんなすげえ人だったなんて。」
ななし「人・・・見かけ・・・判断・・・否・・・」
ティコ「た、確かに・・・・でも、そんな偉大な方なら
    なおさらなんで管理役なんかでおさまってるんですか?」
サファリ「そうだよな、そんなすげえ天使なら
     もっと上でふんぞり返っててもおかしくねぇんじゃねぇの?」
よしき「確かに普通のエリート天使ならそうなってたんですね。
    でもひつ爺様にはある欠点があったんですね。」
だい「欠点?」
よしき「いえ、欠点とはいえないかもしれませんが・・・・」
ユージ「人が良すぎたのよ。」

ユージとエイジが現れる。

ユージ「人が良すぎたせいで、ひつ爺様は高い地位を目指そうなんて欲を持たなかった。
    それよりもひつ爺様は愛する人を守ろうとしたんです。
    そのためにエリートコースから外れたとか・・・」
ロック「???どういうことだ?」
エイジ「もう半世紀近く昔のことかのぅ・・・ちょっとした事件があってな。
    天界の重要機密が盗まれ、悪の手に渡りそうになったんじゃ。」
サファリ「重要機密?何だそれ?」
エイジ「ワシもようしらんが、『めいどの世界』や『しつじの世界』を
    壊滅させるほどの強い影響力のあるものだったらしいぞ。」
ユージ「その原因が一人の天使だった。
    彼女は悪の手先に騙され機密を持ち出し手先に渡そうとしました。
    それを取り戻し天界を救ったのが若かりしころのひつ爺様だったんです。」
そら「へぇ〜〜☆おじいちゃんかっこいい☆☆」
ロック「やるじゃねえか、ジイさん。」
エイジ「でもそれでめでたしめでたしとはいかんかったんじゃ。
    騙されて機密を盗んだ天使が天界裁判で罪を問われたんじゃ。
    判決は有罪、彼女は永久に牢獄暮らしを強いられそうになった。」
だい「そんな・・・」
エイジ「そこでひつ爺は裁判で彼女の無実を主張した。
    幼なじみだったその天使が永久に牢屋に入れられるのがたまらんかったんじゃろうなぁ。
    その姿があまりにも鬼気迫るものだったんでよからぬ噂を生んでしもうた・・・」
ティコ「よからぬ・・・噂?」
よしき「今回の事件の首謀者は実はひつ爺様で
    土壇場で罪の意識に負けむこうを裏切った・・・・
    だから無実で裁判にかけられている天使の弁護を
    かってでているんだ・・・・ですね?」

静かにうなずくエイジ。

サファリ「そんな・・・でたらめもいいところじゃねえか!!」
ユージ「でも世間はその噂を信じかけていた。
     ひつ爺様がその噂に対し何も反論しなかったから・・・」
そら「どうして?」
エイジ「『反論したら彼女一人が罪を背負ってしまう
     自分が耐えればいいことだから・・・』じゃと。」
ユージ「結局判決を迷った裁判官は二人を無実にしました。
    でもそのかわり、
    ひつ爺様はエリートコースから外れることとなった
    ・・・・・ということです。」

しばし沈黙。

ロック「・・・・なんか、すげぇな、あのジイさん・・・・」
サファリ「俺も・・・ちょっと誤解してたぜ・・
     ただの変わったジイさんだとばっか思ってた・・・・」
エイジ「ひつ爺はこのことを隠したがっとる。
    お前ら、ワシらがこのことを話したことは内緒じゃぞ☆
    帰ってきたときはいつもどおり振舞うんじゃ☆いいな?」
そら「ボク・・・おじいちゃんの肩もんであげようかな・・・」
だい「ボクも・・・何かお手伝いしたい・・・」
エイジ「じゃから普段どおり・・・・」
ユージ「今日はいいんじゃないですか?だって今日は・・・」
よしき「9月15日・・・・」
サファリ「あ・・・・」
ロック「そっか・・・」
ティコ「・・・敬老の日、ですね。」
エイジ「ふぅ・・・そうじゃな☆よし!!今夜はパーティじゃ!!!
    みんなで仕度して、ひつ爺の苦労をねぎらうぞぃ☆☆」
みんな「おう!!!!!」


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