死の先に在るモノ

第4話「護衛者」(ガーディアン)

アパートから消えた15人は少し離れた空き地に出現した。
ゆき「なにか、感じます・・・あまりいい気配ではありませんね・・・
   邪悪という程ではありませんが・・・」
ここは、ある悪徳不動産業者が強引な地上げを行って更地にし、そのすぐ後に地価と株価が暴落。
その悪徳業者と融資していた銀行もそのあおりを受け経営破綻に追いこまれたという、いわく付きの土地であった。
ただ、周囲を工事用の金属の板で覆われ、外から中を窺い知ることはできない。
その中側にいたのである。
 
レオン「まずは奴をここに呼び込む為の結界を張る。
    さすがに封冠を付けたままじゃぁな」
封冠はその名の通りに大天使・神格者としての能力を大幅に制限し、封印する物である。
ただ、真の力を解放すると体力を大幅に消耗する。
場合によっては命に関わる程に・・・
つまり能力を封印するリミッターであると同時に、力を使い過ぎない為のセーフティでもある。
 
レオン「解封!!」
レオンの封冠が砕け散り、力が解放される。
レオンの背に守護天使の物とは違う、大きな青白い羽が生まれ、羽が光輝く。
と同時に荒地全体が、半透明なうっすらと光輝く結界で覆われる。
レオンの特殊能力の「結界」である。
レオンの結界は上級神格者の能力を持ってしても破るのは困難である。
欠点は一度使うとしばらくは使えない事、ある程度の広さしか出来ない事(小規模な結界は作れない)、任意に消す事が出来ない事(時間が経てば消える)などである。
 
サキ「・・・はっ!!」
サキは剣を地面に突き刺す。剣から魔力を地面に展開させ、六芒星の模様を出現させた。
結界を張ったレオンは懐から針金の輪のような物を取り出し、頭に被る。
針金は柔らかい光を発しながら、額から後頭部へと覆って行く。
そうこうしている間に、再び封冠となって装着されていた。同時に羽も消える。
呆気に取られていた13人(何人かは羽に見惚れていたようだ)に呼びかける。
 
レオン「続いてだ、今から守護方陣を作る。これで奴は手出し出来なくなるはずだ」
あかね「はず・・・ね・・・」
みか「ちょ、ちょっとお、ホントに大丈夫なの?」
レオン「現時点で最も強力な六芒星の方陣を12人・12柱で構成するんだ。
    滅多な事では破れはしないさ。ああ、まずはご主人はここ、中央だ」
サキ「・・・理論上は十分に耐えられるわ・・・敵の力量の情報が正確なら・・・
   ・・・あなたはこっち・・・あなたはそこ・・・」
つばさ「嘘でもいいから安心させて欲しかったんだけど・・・」
サキ「・・・善処するわ・・・次回から・・・次回があれば、の話になるけれど・・・」
たまみ「ちょっとぉ、不吉な事言わないでくださいよ」
そう言いながらもサキとレオンの指示に従い、青年を護るように囲む位置に立つ。
 
               らん
              /   \
  みか--もも--なな-あゆみ
    \  /  \    /  \  /
    あかね-ご主人様-みどり
    /  \  /    \  /  \
  つばさ-るる-たまみ-くるみ
             \    /
               ゆき
 
所定の位置につき、魔力を護りの力へと集中させる。
魔力の高まりと共に、12人の服が次第にピンクを基調とした「メイド服」へと変化していく。
サキ・レオン「「護りの力よ!」」
12人『我らを護り給え!!』
魔方陣は一瞬、光輝く膜のような物に覆われ、次の瞬間透明に戻る。
だが青年・ゆき以下の13人は足に違和感を感じた。
13人『??動けない?!』
そう、足が全く動かせないのだ。地面に張りついたように。
 
レオン「すまないが、足を固定させてもらった」
なな「なんで〜?これじゃ窮屈だよ〜」
みか「ちょっと!これ、なんとかしなさいよ!」
レオン「下手に動かれると方陣が崩壊してしまうからな」
ななやみかが抗議の声を上げるが、レオンは取り合わない。
サキ「・・・ご主人を・・・危険な目に遭わせたいの・・・?」
その≪殺し文句≫を言われては黙るしか無い。渋々ながら沈黙する。
もっとも、現時点でも十分に危険な状態ではあるのだが。
 
緊張状態のまま、じりじりと時間だけが過ぎて行く。
どの位、時間がたっただろうか・・・みかが耐え切れずに話しかける。

みか「ねえ、ご主人様を狙う・・・敵?って、どんな奴なの?」
レオン「どうやら、冥府の闇の住人・・・らしい。詳しくは俺も知らないのだが・・・
    本来は人間とも守護天使とも関わらずに別世界で暮しているそうだ。
    だが、極めて稀に人間を狙う奴が現れる・・・って話だ。
    そいつは『魂を喰らう者』(ソウルイーター)と・・・」
サキ「・・・来る・・・!」

突然、会話を遮るかのようにサキが叫ぶ。今までに無い緊張の声で・・・。


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