P.E.T.S[AS]

第5話「温泉旅行」

…………
再び目を覚ました時には、もうすっかり日が暮れてしまっていた。
ベッドから起きあがってしばらく経っても、まだ頭がぼうっとする。
置き時計に目をやる、5時2分だった。

「う……うぅ……」

また涙が、こみ上げてきた。さっきさんざん泣いたのに。
幼い私だって分かってる。いくら泣いたって、健介お兄ちゃんが来てくれなかった事実は変えられない。
毎日朝起きだして外に出る私は今日とうとう、お父さんに叱られてしまった。
きっと昨日お兄ちゃんを見たから……。
健介お兄ちゃんは悪い人じゃない。そう訴えようとしたが、限りなく小さく、そして緊張に震えた私の声がお父さんの耳に届いたとは到底思えなかった。もっとも聞こえたとしても、納得してくれるかどうか分からないけれど。

まるで捨てられた子犬のような気分。何もする気がおきない。このまま明日になるまで眠ってしまいたい。
再び布団をかぶろうとした、その時だった。

「?」

ほんのかすかだが、猫の鳴き声がした。
起きあがって辺りを見回すが、もちろん猫などいない。この部屋の窓も全部閉め切られている。ここは2階だし、猫の声が届いてくるとは思えない。
でも確かに猫、それもティコの鳴き声が私に耳元に届いてきたのだ。まるで私を呼んでいるかのような気がした。
私はいてもたってもいられず、廊下に飛び出した。
どうやら、お父さんはまだ書斎に居るらしい。見つかる心配もない。
階段を下りて、玄関に向かう途中、再び鳴き声が聞こえた。そして間違いなくティコの鳴き声だと確信する。
何故私の家へやってきたのか。疑問符が頭にくっついたまま、私は玄関のドアを開けた。


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