きよく!ただしく!!

元六・ヱ戸時代編 第弐話「使命と恋心の間」

きよ「じゅ・・・・そや?」

商人の街、大阪の片隅にある貧乏長屋の一室。
由緒正しき(?)義賊集団「闇夜の九官鳥」の面々・・・
飾り職人の千兵衛、その妹で幼き頭・きよ、
そして瓦版屋のよしきが額を近づけて話しております。

よしき「はい。本町一丁目に店を構える廻船問屋『寿曽屋(じゅそや)』
    が今回の仕事場所なんですね。」
千兵衛「そこは僕らが狙うだけの場所ってことなのか?」

にやりと不敵な笑みを浮かべるよしき。

よしき「もちろんですね。それもここ数年では一番とも言える
    悪商人なんですね。僕が調べた結果ですが・・・・」

懐からメモ書きを取り出すよしき。

よしき「『寿曽屋』は表向きは普通の廻船問屋なんですが
    裏では長崎でしか売買してはならないと決まっている
    南蛮の商品を大量に仕入れ公家や代官といった人達に売り、
    南蛮へは代金代わりに町娘を・・・・」
千兵衛「売りさばいてるってのか?」
きよ「でもそんなことしたら町方とかが調べるんちゃうの?」
よしき「そんなことが無いように商品を買った
    お上が圧力をかけてるんですね。
    結局単なる『神隠し』で処理され、娘の家族は涙を飲む
    ・・・・・というわけなんですね。」

きよは座りなおし、お茶をいっぱいすすった。

きよ「よしきのいうとおり、そら近年まれに見る大悪党やな。
   そういうやつらをギャフンと言わすんがうちらの仕事や!
   よしき!!!」
よしき「お頭、心配無用なんですね。
    この日のために作り上げた最高傑作があるんですね。」

よしきのメガネがキランと光った。

よしきは千兵衛やきよのように盗賊一族の直系ではなく
遠い親戚にあたる男である。
彼の一族は代々、直系の者達が仕事をする際に
裏にまわってサポートをしているのであります。
彼の一族は昔海を渡ってやってきた西洋の技術者から
西洋の最先端の技術を学び、
当時では珍しかったエレキテル、つまりは電気をも駆使した
様々な機械を発明しているのであります。

・・・と、ここで「何でこの時代に電気使ってやがるんだ?!」という
指摘がありそうですが・・・バーチャルですから、ご容赦ください。
もし納得いかなければ、彼こそ平賀源内だと思っといてください。

閑話休題。

 

千兵衛は立ち上がり、戸口へと向かった。

きよ「どこいくんや、お兄ちゃん?」
千兵衛「こないだ頼まれたかんざし、届けに行って来るんだよ。
     ついでに散歩がてら今度の仕事場ものぞいてくるよ。」

振り返り、笑顔で答える千兵衛。

きよ「お兄ちゃん・・・
   わかってるやろうけど、これはうちらに課せられた使命やで。
   お母ちゃんがゆうてたけど、
   この街は華やかに見えて多くの人達の涙の上に作られてんねん。
   その涙、無駄に流さしたらアカン。
   哀しみ、苦しみ・・・避けることはできんでも、
   その後救われるってこと、みんなに教えたる。
   そうすればその人は痛みのわかる優しい人になれんねん。
   うちらはそのために悪いやつから金を取る・・・返してもらうんや。」
千兵衛「その話なら、僕だって母さんから何度も聞かされたよ。
     大丈夫、わかってるよ。そんじゃ、行ってくるよ。」

千兵衛はかんざしの入った包みを持ち
いつのまにか太陽が高くなっている表に出て行ったのであります。
きよは小さくため息をついた。

よしき「千兵衛さん、どうかしたんですか?」
きよ「お兄ちゃん、恵お姉ちゃんのこと考えてんねん。」
よしき「恵お姉ちゃんって・・・十手持ちの恵親分のことですね?」
きよ「お兄ちゃん、お姉ちゃんにホの字やねん。
   お姉ちゃんもなんかお兄ちゃんに気ぃあるみたいやし・・・・」
よしき「でも、相手は僕らを追うおかっぴきで
    こっちはそれから逃げる盗賊団じゃないですか。
    いくら好き同士でも、夫婦には・・・・」
きよ「わかってるわ、それくらい!!
   でも・・・・恋心ってそんなことで治まるもんやないやろ?」
よしき「お頭・・・・・」
きよ「本人もそれがわかってるさかい悩んでんねん。
   でも、大丈夫や。だって・・・うちのお兄ちゃんやもん☆☆」
よしき「きよさん・・・・・あなたほんとに6歳ですか?」
きよ「なっ?!何や急に・・・・」
よしき「いやぁ・・・あまりにもさっきから大人顔負けのなりふりなので。
    もしかしたら体がちっちゃいだけで
    実際は僕らよりも年上だったりして・・・・」
きよ「よ〜〜〜〜し〜〜〜〜き〜〜〜〜〜!!!!
   こんなかわゆいみんなのアイドルを捕まえて
   年増扱いとは何事や!!!
   もう我慢ならん!!ちょっとこっちこいや、こら!!」
よしき「あっ!いやっ!!ち、ちょっと・・・・あれ〜〜〜っ!!!!」

その日長屋の近所では、奇怪な叫び声が日没まで響き渡ったそうな・・・


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