〜ノエルラントの名花たち〜 「みさきがまゆりに捧げる賛歌」

夢追い虫カルテットシリーズ番外編
 〜ノエルラントの名花たち〜 「みさきがまゆりに捧げる賛歌」

(その1)

ある初夏の昼下がり、ノエルラント第二公女・みさきは姉であるまゆり第一公女に用事があるためにまゆりの部屋を訪れることにした。

みさき第二公女「(ノックして)お姉さま?」

しかし、返事が返ってこない。と言うより中からは物音一つしない。

みさき第二公女「おかしいですね…。お姉さま、失礼します。」

結局みさきは無断で中に入る格好となった。すると…。

まゆり第一公女「zzz…。」

夏服の白いワンピースを着たまゆりはシーツもかけずにすやすやと眠っていたのである。
枕もとの机にはなにやらレース編みのやりかけとおぼしき物が転がっていた。

みさき第二公女(お姉さま…このままではお風邪を…。)

みさきは慌ててまゆりにシーツを掛けた。

みさき第二公女「これでよしっと。」

落ち着いたみさきはベッドサイドの椅子に腰掛け、まゆりの寝顔を見た。すると、みさきの心の中に何とも言いようのない感情がふつふつと湧き出てきたのである。

みさき第二公女(お姉さま…。なんて屈託のない優しい寝顔なんでしょう…。わたしはお姉さまの妹で本当に良かったです。)

そして、まゆりの寝顔を見ているうちにみさきまでも心が穏やかになっていった。

みさき第二公女(ああ…まゆりお姉さまの寝顔を眺めているうちに…何だかわたしまで…。)

みさきは椅子に座ったまま心地よい眠りの世界へと落ちていった。

しばらくして…

まゆり第一公女「あ、わたくし…。どうやら編み物に疲れて眠ってしまったようですわね…。」

まゆりは起き出した。周りを見てみると、椅子に座って眠っているみさきがいた。

まゆり第一公女(どうやらみさきが掛けてくれたようですわね…。)

まゆりはみさきの優しさにじんとなった。

まゆり第一公女(みさき…わたくしはみさきのような妹を持てて世界一の幸せ物ですわ…。ありがとう…。)

考えることも一緒の仲良し姉妹であった。

その1・おわり


(その2)

その日、同腹の姉妹であるまゆり・みさき・ゆうきの3人はアルバムを見合っていた。

まゆり第一公女「これはみさきの公女認定式の時のですわね。美しいですわね…。」
ゆうき第四公女「さすがみさき姉さまだな。」
みさき第二公女「まあ…ありがとうございます。」
ゆうき第四公女「これは去年の旅行の時のか。」
まゆり第一公女「あれは楽しかったですわね。」

そんな感じで会話が進んでいった。そして…

ゆうき第四公女「あれ?これは何であろうか?」

ゆうきが1枚の写真を見つけた。

まゆり第一公女「ああ、これですか。これはわたくしが小さい頃にあなたたちやお母さまと海に行ったときの写真ですわね。あなたたちはまだもっと小さかったですから覚えていないでしょうが…。」
ゆうき第四公女「確かに覚えていないな。」
まゆり第一公女「みさきはどうでしょうか?」

そう言ってまゆりがみさきのほうを見てみると、みさきの表情がなにやら不気味な感じの微笑みに変わりつつあった。

みさき第二公女(ああ…小さい頃のお姉さま…。なんて可愛らしい…。今すぐタイムマシンに乗ってあの頃のお姉さまの頭をなでなでしたい…。)「むふぅ…。」
まゆり第一公女「…みさき?」
ゆうき第四公女「何やら笑い方が沙子ちゃんさんみたいになっているが…。」

まゆりへの愛情が不気味な微笑という形で現れてしまったみさきと、それに引き気味のまゆりとゆうき…。そんな平和な三姉妹であった。

その2・おわり


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