このショートストーリーは「死の先に在るモノ」という小説作品のギャグ話です。
「死の先に在るモノ」を未読の方は、面白さが半減する可能性があります。
ぜひ、「死の先に在るモノ」(少なくとも第5話まで)を先にご覧になった後で、お楽しみください。

(註:この話は、同名の映画「今そこにある危機」とは、何の関係も無い事を明記しておきます)

VSS「今、そこに在る危機(笑)」

ここは、役所の世界、特務機関オフィス。
事の起こりは、セリーナがサキとレオンより早く休憩に入り、二人の為に飲み物の買出しに出かけた事から起こった。

その日、仕事が一段落したセリーナは、まだまだ書類の山と格闘しているサキとレオンに声をかける。

セリーナ「ふう、ひとまずは終わりね。あ、サキ、レオン、何か買ってくるけれど、何を飲む?」
サキ「……烏龍茶……」
レオン「オレンジジュース」

十数分後、セリーナは大量の缶が入った袋を抱えて戻ってきた。

セリーナ「はい、沢山買ってきたわよ。好きなだけ飲んでね」
レオン「おお、サンキュ。えらく気が利くな。おい、サキも根を詰めないで、そろそろ休憩にしようぜ」
サキ「……ええ……そうさせてもらうわ……ありがとう……」

サキとレオンは、缶を袋から取り出す。
この時、サキは慣れないデスクワークで膨大な書類を処理し続けていた為、半ば頭に靄がかかったような状態になっていた。その為、烏龍茶らしき缶をよく確かめずに取り出して口を付けていた。それが悲劇(笑)幕開けだった。

レオン「やっぱりオレンジジュースは果汁100%でなきゃあ……ん? サキ? どうした? ぼんやりして? ……げ!! それ……ウーロンハイ……」
サキ「だ〜いじょ〜うぶ〜〜、このくら〜いにゃら〜〜、じぇ〜〜んじぇん、よわにゃいれすよ〜〜」
レオン「セ〜リ〜〜ナ〜〜〜〜何で酒なんか買ってくるんだ〜〜!!」
セリーナ「あ、あはは、わたくしが後で飲もうと思っていただけなんだけど……じゃね〜〜」
レオン「あ、逃げるな……げげ!」
サキ「レオ〜ン……私ってそんにゃに魅力にゃい?」

レオンは、酔っぱらって涙目になったサキにしがみ付かれていた。
一方、三十六計を決め込んだセリーナであったが、部屋を出た所で、今最も拙い相手に出会ってしまっていた。

ロイ「何を慌てているのだね? セリーナ君」
セリーナ「い、いえ、何でも……」

レオン「うぎゃぁぁぁぁぁぁ!!」
サキ「あれ〜〜? レオ〜ン? もうねちゃったの〜〜?」

何とか誤魔化そうと知恵を絞っていたセリーナと、そのセリーナを不審気に見ていたロイの耳に、レオンの悲鳴と舌足らずになったサキの声が飛び込んできた。
何事が起きたのか、サキを知る者にとって、状況を推測する事は極めて容易であった。

セリーナ「それでは、そういう訳で……」
ロイ「……待ちたまえ」

そそくさとロイの脇をすり抜けて退散しようとしていたセリーナは、『むんず』とばかりに、ロイに襟首を掴まれる。
ロイも、セリーナの態度から、彼女が全ての元凶である事を一瞬で理解したのであった。

セリーナ「ちょ……司令、放して下さい。そんな事しなくても……って、痛たた……」

ロイはセリーナの抗議を無視し、襟首を掴んで引き摺るように、セリーナを連れて部屋の中に踏み込む。

ロイ「サキ、何をしている」
サキ「あ〜、しれ〜い、酷いんれすよ〜〜、レオンが〜私を放って〜〜ねちゃったんれすよ〜〜。ううっ、やっぱり、やっぱり、私にゃんて……」

サキはロイに向かって涙目になりながら上目遣いで見上げて訴える。

サキ「う、う、う、うわぁ〜〜〜〜〜〜〜ん!!」
ロイ「セリーナ君、責任は果たしてもらおうか」
セリーナ「え? 司……令……? きゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」

泣きながら抱きついてきたサキに対し、ロイは冷静な態度と口調を崩さず、襟首を掴んでいたセリーナを楯にするように、位置を入れ替える。
すると、サキは予想通り、セリーナを思いっきり抱き締めた。セーブの効かない渾身の力で……

サキ「あれ〜〜? セリーナぁ、どうしてこんにゃ所でねちゃってるの〜〜? おきてよぉ〜〜」

ロイは、既に姿を消している。その為、気絶したセリーナを揺するサキの思考回路から、ロイの存在は綺麗さっぱり消え去っていた。
サキは、気絶して倒れているレオンとセリーナを見比べると、不満げに頬を膨らませ、座り込む。

サキ「むぅ……つま〜んにゃいの〜〜私もねるぅ〜〜おやしゅみにゃさ〜〜い」

翌日……

レオン「おい、セリーナ……」
セリーナ「な、何かしら、レオン?」
レオン「サキはどうしている?」
セリーナ「例によって例の如し……ね」

特務機関オフィスルームにて。

サキ「……うう……頭が痛い……気持ち悪い……体がだるい……何で……私は……オフィスの床で寝ていたの……?」

一方、レオンとセリーナは、サキの居るオフィスから少々離れた『ある場所』に居た。
昨日の罰として、『ある作業』を、ロイ司令直々に命令されていたのである。

セリーナ「サキはオフィスの床磨きで勘弁して貰ったから……」
レオン「まあ、サキの事もだが……何故に飲んでいない俺まで!!」
セリーナ「あ、あはははは……ごめんなさい……わたくしが悪かったわ……うう、体が痛い……」
レオン「罰として便所掃除をしなきゃならねーんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!! ううっ、体が……痛てぇ……」

☆Fin☆


盾奈さんのリクエスト、「ロイ司令の前で酔いつぶれるサキ」というシチュでVSSにしてみました。
結局、酔っ払ったサキは、最強・最凶・最恐・最狂・最脅(笑)、って事で。
なお、掲載に当たっては、BBSで発表した物を一部加筆修正しました。

 

 
 
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