Legend of Quel

第三部(完結編) 第37話

大邪神ガイナギロスの脅威が去ってから一ヶ月...
世界に再び平和が訪れ、人々はそれぞれの日常を過ごしていた。

 

 

天界では...

マリー「ほらほら、見て見て!」

天界の博物館で彼女が指をさしているのは、一体の像である。

ライト「あっ...!これって...」

それは、全身をマスクとアーマーで固めた男が力強く仁王立ちしているようであった。

ハープ「えっと...タイトルは『青の勇者』だって。」
マリー「青の勇者か...う~ん、いいよねえ。」
ライト「でも、どうせなら素顔の像も作って欲しかったなあ...」

一瞬明るく盛り上がりかけるが、ハープは顔を曇らせる。

ハープ「でも、この人はもう...」

3人はG3が消えた時の事を思い出す。

マリー「あのちっちゃい子、かわいそうだったね...」
ライト「......」

ライトは下を向いて黙り込んでしまった。

 

 

 

天界の神々が住まう場所の一角にある『開かずの間』では...

神様1「ふう...果たして、こんなものをとっておいていいものかどうか...」

その視線の先には、G6‐オメガの愛機メタルマッドネスのウェポンコンテナが厳重に保管されていた。
コンテナの中には、VM‐01、VG‐02、VS‐03、
VA‐04、VX‐05、VR‐07、VL‐08が入っている。

神様2「これを使いこなせる者はもはやこの世におるまい。

だが、G3‐XXの量産機を作るうえでのよいサンプルになるはずだ。」

神様3「ああ。そのために回収してきたのだからな。

守護天使達がもっと身近に使える防衛システムで、人間界と天界を守るために...」

神様1「そうか...そうだな。
クゥエルの頑張りを無駄にしないためにも、我々は出来る限りの事をやろう!」

 

 

 

天界のとある一角で...

レオン「おい、サキ。聞いてるか?」

サキ「G3‐XXの量産計画ね。誰でも使える、人に優しいシステムを目指すとか...」
レオン「そんなもんが普及したらどうなる事やら。」

その会話を物陰で聞いていた者がいる。2人はその気配を察知した。天界で感じた気配と同じである。

サキ「......またあの気配よ。」
レオン「相変わらず殺気はないようだが。G3の量産機の事を探ってるのかもしれんな。」
サキ「私達の後をつけて情報を盗み聞きするつもりかしら...」

2人は人影に聞かれないように注意しながら会話をする。

人影「G3...量産機......!」

その人物は、自分の手をじっと見ながらそうつぶやく。まるで、何かを決意するかのように...

 

 

 

 

どこかのカラオケボックスで...

エレナ・エレナ主「ぶ~ち~かま~せ~~~♪ど~く~で~んぱ~~~♪PETSとしっぽのあるところ~~~♪」

デュエットでひとしきり盛り上がる2人。

エレナ「あ~歌った歌った。やっぱり大声を出すのは気持ちがいいですわ☆」
エレナ主「ああ。今度はRynexさんも誘ってこようか。」
エレナ「そうね。でも、今は2人っきりのデートを楽しみましょ♪」

ご主人様にひっつくエレナ。ご主人様は照れ笑いする。

エレナ主「はははは......(苦笑)」

エレナ(そうよ、人間も守護天使も関係ない...私も、大好きな人のために精一杯生きるわ。あの人のように...)

 

 

 

 

とあるそば屋で...
ここではロックとティコが働いていた。

ロック「そんでさあ、そいつがまたすっげえんだよ!」

ロックは、そば屋の娘に青い鎧の男の話を熱く語って聞かせた。勿論、守護天使云々の事はうまく隠して。

ティコ「ロック、その話はこれでもう36回目ですよ。霞ちゃんも困っているじゃないですか。」
ロック「えっ...そうだっけ?」
ティコ「この間なんか、口止めされていたのに真純先生にうっかり話してしまったし。」
ロック「そうそう、先生、もう夢中だったもんな。そいつに会わせろ~って。」
ティコ(ご主人様、今ごろ困っているでしょうね...(苦笑))
霞「...よくわからないけど、何か凄そう......」

ロックはティコから視線を逸らすと、それまでの脳天気な表情から一変、表情を曇らせる。

ロック(俺達があいつにしてやれるのは、語り部になってやる事だけだ...)

ロックがあの青い勇者の話をする時は、努めて明るく振舞うようにしていた。
そうしなければ自分の感情を抑えきれなくなるような気がしたからだ。そんなロックの心情に、ティコは当然気づいていた。

ティコ(ロック...)

 

 

 

 

あるクラフト作家の工房にて。

美月「真純先生、どうしたんですか?目をギラギラさせて。」

美月は、クラフト作家藤原真純のアシスタントの仕事をしていた。が、その日はなぜか真純の様子がおかしいのだ。

真純「ねえ、美月。G3って、な~に?」
美月「ヘッ......???」
真純「この間ロック君から聞いたわよ~。何か、すっごく強い正義の味方なんですってね。
会った事あるんでしょ?私にも会わせてよ、ねっ!ねっ!ねっ!」

こういう話が好きなのか、まるで特撮ヒーローに夢中な子供のようにはしゃぐ真純。

(ちなみに、G3がいなくなった事は聞いていない)

美月「い、いや...あの...それが......
   もう!こうなると思ったから口止めしといたのに...ロックのおしゃべり!」

 

 

 

きよ「みんなー、早く早く。」
なの「あ、きよちゃん、待ってなの~」

きよ、なの、千田さん、恵、よしきは遊びに出掛ける途中だった。

恵「こら、そんなに走ると危ないわよ。」
よしき「あんなにはしゃいで、まだまだ子供なんですね。」

信号が青になり、きよとなのが横断歩道を渡ろうとした時、1台のトラックが走ってきた。

千田さん「これって、何かどこかで見たような展開...」

しかし、以前とは違ってトラックはブレーキをかけて止まった。運転手が窓から顔を出す。

きよ「あっ、おっちゃん。久しぶりやな。」
郷太「おいおい、だから俺はまだそんな歳じゃないって(^^;」
恵「ねえ、そういえばここじゃない?前にきよちゃんが轢かれた所って。」
千田さん「そうか...それで...」
郷太「いや~、あの時はほんとすまなかったな。
   俺、もうダメかと思ったよ、はははは...(苦笑)ところで、みんな揃ってどっか行くのか?」
千田さん「ええ、ちょっと。」
郷太「だったら俺のトラックに乗せてってやろうか?乗り心地はあまりよくないけどな。」
恵「えっ、ほんとに?」
千田さん「ありがとうございます。では、お言葉に甘えて。」
よしき「何か悪いですね。」
きよ「よっ、おっちゃん太っ腹!!!」
なの「太っ腹なの!!!」
郷太「だから、おっちゃんはよせって(笑)」

 

 

 

 

夢魔の世界では...

ステュクス「Rynex、今ごろどうしてるかな。」
リーザ「きっと元気にしてるわよ。主様がいなくなった時はもう死にそうなくらい落ち込んでいたけど、あの子はああ見えて結構強いから大丈夫よ。」
ステュクス「...そうだね。」
リーザ「それにしても...」
ステュクス「ん?」
リーザ「本当に素敵な方だったわ、あの主様...」

遠い目をしてそう言うリーザを、ステュクスはただ黙って見ているしかなかった。

 

 

 

 

一方、Rynexの両親は...

ダイデ「Rynexの奴、あれからまだ性別が決まっていないようだ。」
ライザ「そうらしいわね。」
ダイデ「いつか見つかるさ。あいつの心をときめかすような魅力ある人物がな。」
ライザ「ええ。その時はしっかりと祝ってあげましょう。」


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