Legend of Quel

第三部(完結編) 第33話

クゥエルと大邪神の最終決戦がついに始まった。
戦う両者の姿を捉えられる者は誰もおらず、なにが起きているのかはわからない。
どちらが優勢か、それすら誰も認識できない。人々は、ただ見守るしかなかった...

それからどのくらい時間が経ったのかはわからない。

やがて両者が姿を現わした時、クゥエルの触手が大邪神を完全に捕らえていた。
大邪神は、片腕、片足をもがれており、体中に切り刻まれた跡があった。触手が大邪神を締め上げ、クゥエルの前に持ってくる。

クゥエル「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

雄叫びと同時に、大邪神の体に鋭い切れ込みが入る。おそらく体のトゲを突き刺しそのまま切り裂いたのだろう。それを認識できる者はどこの次元を探しても皆無だが。

大邪神が液体のようにドロドロに溶けて触手から抜け出し、その後すぐにまた元通りの形になるが、ダメージの回復が間に合わず確実に傷は増え、大邪神は段々と弱っていった。

これに対し、クゥエルは全くの無傷どころか、ますます活発に、ますます凶暴になっていく。クゥエルの力は、もはや大邪神をも完全に凌駕していた。
覚醒したばかりで、全くと言っていいほど力を出していないにも関わらず。

(せいぜい頑張って『もう一仕事』しな...)

G6が死に際に言い残した言葉がレオンの脳裏に蘇る。

レオン「人質を取ってG3をおびき寄せたのは、戦いの余波を大邪神の復活に利用するためだけではなかったようだな。」

サキ「まさか、復活した大邪神がクゥエルを覚醒させる事も計算のうちだった...!?」
メガミ様「そして、覚醒したクゥエルと大邪神ガイナギロス。この2体のうち勝った方が全てを滅ぼす...」
神様1「間違いなくクゥエルが勝つがな。」

リーザ「す、すごい......」
ライト「え、え、えっと...G3が大邪神にかなわなくて...」
ハープ「その大邪神がクゥエルにかなわない、と。」
マリー「でも、クゥエルはG3なんだよね...???」

既に興奮を通り越して混乱状態にあるようだ。
なお、クゥエルが姿を変えた時から水晶玉の映す映像にちらほらとノイズが入り始めていた。クゥエルと大邪神の力が強すぎて水晶玉にかかる負担が大幅に増えたためである。

るる「じーすいーたん......」

るるがクゥエルの姿を見て涙ぐむ。

たまみ「るるちゃん...?」

るる「じーすいーたんが悩んでたのは、これだったんらね...」

るるの涙がさらにその量を増してくる。

るる「自分があんなお化けさんになっちゃうのって、きっと...すっごく、すっごく、怖かったんらお......」

大粒の涙を浮かべながらクゥエルの方を向くるる。

るる「るる、じーすいーたんの事応援する!じーすいーたんのためにできる事をする!!!
だから...だからじーすいーたん、負けないで!!!!!お化けさんな自分に負けないで!!!!!」

たまみ「そうよ!!!あなたは、全てを滅ぼす悪魔なんかじゃない!!!あなたは...仮面ライダーよ!!!!!」

その時、クゥエルの目の前を何かが横切る。いや、横切ったように見えた、と言った方が正しいかもしれない。

クゥエル「グウウウウウウ......?」

視線の先にあったのは、何とるるのペンダントだった。
G3-XXのアーマーとともに消滅してしまったはずなのだが、クゥエルにはペンダントが見えたような気がしたらしい。
しばしの間、幻と思しきそれをじっと見つめるクゥエル。

大邪神「ギエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエッ!!!!!!!!!!!」

傷つきながらもクゥエルに向かっていく大邪神。だが...

グワッシイイイイイイイイイイイイイイイン!!!!!!!

クゥエルは大邪神の首を片手で掴み上げると、残った右拳を構えてアッパーをお見舞いする。
勿論、誰にも見えない速さで...とは言ってもこの場に置いてはもはや速さなどという概念すら全く意味をなさないのだが。

ドグオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!!!!!!!!!!!

大邪神を吹っ飛ばすと、それまでとはうって変わって人間的な動作で身構えた。大邪神もまた体勢を立て直してくる。

サキ「クゥエルの動きが変わった...?」
レオン「そ、それって、まさか......!」
サキ「見て。クゥエルの目が...」

クゥエルの目は先ほどまでの黒ではなく、なぜか赤く輝いていた。
クゥエルは、両腕をクロスさせてから両拳を脇に構え、何やらチャージを始める。
大邪神もまた、クゥエルに対抗してチャージを始めた。両者の体に、かつてない力がみなぎる。

メガミ様「こ、これで...」
Rynex「全てが決まる......!!!」

ギュイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ..................

大邪神「キシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!!!!!!!」

クゥエル「.........」

ドッヴァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

先に全力を撃ちだしたのは大邪神の方だった。
『万物』を滅ぼし、『無限』を滅ぼし、『無』をも滅ぼすガイナギロス最強最悪の消滅奥義『ドゥームズデー・ディスラプター』
1発で無数の次元が消滅する程の威力を誇る。3次元で撃った場合、これで3次元世界そのものが何度消し飛ぶかわからない。

もし無理やり数字で計算すれば、それこそ天文学的な数字が弾き出されるだろう。おそらくは無量大数...いや、不可説不可説転のレベルであろうか。

(*不可説不可説転:10の37澗2183溝8388穣1977禾予6444垓4130京6597兆6878億4964万8128乗)

勿論あくまで無理やりであって、数字ごときで計れるような代物ではないのだが。

クゥエルの一撃は、果たして間に合うのか?


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