近年、「もえたん」や「CPUの創り方」などを始めとして、技術・勉強系の本をより分かりやすく、そして苦手意識なく気軽に読んでもらえるように可愛らしい萌えキャラを内容に配した、いわゆる萌え技術本が隆盛を見せています。
一般人の常識では果たして売れるのかどうか疑問視されるのが普通なんでしょうけれども、この日本という国の一部の特異な文化の賜物でしょう。これが鬼のように売れまして、今や味を占めた出版社からぽこぽこと雨後の竹の子のように新たな萌え技術本が続々とリリースされ続けています。
そんな中、私が毎日巡回しているプログラム系サイトの大御所、やねうらを先生(当時一世を風靡したBM'98の作者、ゲーム・Windowsのプログラムでは知る人ぞ知る有名人)も、ついに萌え技術本をリリースしたということで早速購入したわけなんですが…。この本、タイトルがイっちゃってるんですよ。確かに萌え技術本の多くはタイトルも面白おかしいのが多いんですが、これはもうハンパじゃない…。
とりあえず、タイトルも含め、どんな内容の本なのか、やねう先生の会社のサイトにある公式宣伝FLASHをご覧下さい。
す、凄いの! 凄いのー!!(←落ち着け)
内容はまぁ…ようするにソフトウェアをクラックして機能制限などを不正にはずすというような手口を、いかに防ぐか…を目標として、不正にはずす手口を紹介するという、鶏と卵どっちが先だ!? みたいな内容なのですが(笑)
それよりも、ええ…この本、(一般人から見た)表紙のアレさ加減も非常に来る物があるんですが(でも表紙描いている絵師さんは有名な方です)それ以上に、タイトルがタイトルなので、「恥ずかしくて店員に置き場所聞けない」という苦情の声が多数寄せられたという曰く尽きの魔書だったりします。
実は私も…それで最初はネットで買おうと思ったんですがあっという間に品切れになってしまい間に合わず、かといって近辺の小さい書店ではさすがに売ってないだろうということで、この本を買うためにだけにわざわざ遠い大きな書店へ出向いたんですよ。
一つめの本屋さんは一応私の日常の行動範囲内の地域では最大のところだったんですが、コンピュータ技術書のコーナーのどこを探しても見つからず。結局しかたなく店員に聞こうとカウンターまで行ったら、ほら! まるで運命が狙っていたかの如く、女性店員しか居やがらないんですよ。
以下、その時のやり取り…。
エマ「あのーすみません。とあるコンピュータ技術書の本探してるんですけれど」
女性店員「どういった物でしょう」
エマ「ええとですね。ソフトをクラック…いや、ちょっといじくるような…専門用語でいうとアセンブリっていうのを使って…って、分かりにくいですかね。はは…つまりその…」
女性店員「お探ししますので本のタイトルをおっしゃっていただけますか?」
エマ「か、か…『解析魔法少女美咲ちゃん マジカル・オープン』 デス!!」
店員さん、しばし沈黙。
や、やっちまったぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
女性店員「……コンピュータ技術書ですよね?」
エマ「多分、そうだと思いまス…」
このとき、いかに内容が良書とはいえこんなタイトルを付けた著者をどれだけ恨んだ事か知れません。で、返ってきた答えが
女性店員「今調べて見たのですが、そのような本は確認できませんでした」
。・゚・(ノД`)・゚・。
女性店員「本社に問い合わせますか?」
エマ「いえ、結構です!ヽ(`Д´)ノ」
オレは一体何しに来たんだ…。店員のおねいさんの前で恥を晒しに電車代まで払ってきたんか…。
これではあまりにも虚し過ぎるので、ダメ元でもう一つ、二番目に大きい本屋さんでも探してみる事にしました。ここで無かったら…ハハハ、先日発売って情報自体…いやその本の存在自体ウソだよね…って思ってたらまたしても本当に置いてないでやんの!
エマ「あの~、あるコンピュータ技術書を探してるんですけれど」
そして出てきたのは……おい! また女性店員か!ヽ(`Д´)ノ 神様今日は一体ボクが何したっていうんですか!!
女性店員「どういうタイトルでしょうか」
エマ「えっとですね……解析……ま、ま、ままま……スミマセン。技術書のわりにちょっと珍しいタイトルでして…(魔法とか付くし)」
女性店員「じゃあ、この紙に書いて頂けますか?」
か、書け!? よりにもよってこのタイトルを紙に書けと!?(泣)
エマ「こ、こんなタイトルでして…」
女性店員「え~…かいせきまほうしょうじょみさきちゃん…まじかるおーぷん? ですね??」
いや、読み上げなくていいから!ヽ(`Д´)ノ
誤解のないように念のため。この本のタイトルのどこら辺が恥ずかしいかっていうと、ね。『解析』とかはいいんですよ。コンピュータ技術だしね。『美咲ちゃん』…っていうのはこの本に出てくる女の子キャラでして、技術書の癖してという意味では恥ずかしいことは恥ずかしいけど、まぁ……置いとくとして、でも次の『魔法少女』って、なにやん!? そしてようやく言い(書き)終えた……と油断させといて、最後にさらに『マジカル・オープン』と付け加えなければならない事に気づかさせる。この妙技!(謎)
恥ずかしすぎる…_| ̄|○
そしてもっと恥ずかしかったのは、エマがこのとき「魔法」の「魔」という漢字が書けなかったという事ですか(笑)
……もう逝っちゃってイイカナ?_| ̄|○
で、結局、その本屋にも売ってなくて(爆) 結局ネット書店cBook24.comで再入荷後すぐ注文して入手する事ができました。
肝心の内容は、確かに良書。あのページ数、決して少なくはないですがそれでも分かりやすさ・イラスト・図重視の萌え技術本の体裁で、よくもまぁ…バイナリエディタの使い方からパスワードハック(文字列読み取り)、条件分岐書き換え、API監視、バックトレース、応用クラック、確認問題集、果ては(Pentium)アセンブラの基礎まで網羅できた物です。体裁に抵抗を示す方もいらっしゃるかと思いますが、プログラマでクラックによる損害を心配される方、あるいはアセンブラやマシンコードに疎くてちょっと知ってみたい、という方は本屋で見つけたら立ち読みされてみると良いと思います。
最後に、先ほどはちょっと冗談を言いましたが、著者の方はご自身でソフト開発会社を運営されており、クラックによってソフトウェアメーカーが受ける被害という物を十二分によく分かっておられるからこそ、その自衛策としてこの本をリリースした(はずである)ので、クラック行為を推奨するための本ではない、という事も(本の中でもそういう断り書きがあるけど)私からもそれは申し添えておきます。
ちなみに、この本に出てくる萌えキャラの子、なぜ「美咲」ちゃんなのかというと、2004年に女の子に名づけられた名前で一番多かったのが「美咲」という名前だから……なんだそうです。そんなに人気なんですか…。
そしてこのタイトルで出版が決まった理由というのが…こんな理由らしくて…。おいおいおいおい!(笑)
この著者のやねうらお先生、以前にもゲーム系のプログラム本「Windows
Proffesional ゲームプログラミング」と「Windows
Proffesional ゲームプログラミング
2」の二つをリリースされておりまして、どちらもかなり高度&有益なTipsが収められています。Windowsという単語が付いていますが、プラットフォーム非依存で通用するTipsも多い(特に2冊目)ので、さらなる向上を目指す全てのゲームプログラマさんにお勧めします(特に2のタスクシステムなど、ゲームプログラムで必須であるにも関わらず、本として今だかつて詳しく言及された事が無い手法にも触れることが出来ます)。
ただし、どちらの本もC++、テンプレート、STL、デザインパターンの知識がある程度無いと、理解が困難な非常に高度な内容です(一部、知らなくても読める部分もあるけれど)。
ちなみに「美咲ちゃん」ネタですが、宣伝FLASHの冒頭の部分を繰り返し聞き続けると何らかのステータス異常に掛かる事請け合いです(笑)